不斉異性化反応

アリルアルコール類の不斉異性化反応

アリルアルコールは有機合成化学反応で頻繁に登場するメジャーな化合物群の一つです。図4-1に示すように、最近、わたしたちは光学活性ジホスフィンTolBINAPとジアミンDBAPENを配位子とするルテニウム錯体と水酸化カリウムから成る触媒を用いることで、アリルアルコールから光学的にほぼ純粋な置換アルデヒドを合成することに成功しました[D1]。この反応は、アリルアルコールの位水素をエナンチオ面選択的に位に移動する極めて効率的な変換です。完璧なエナンチオ選択性に加え、1000分の1当量の触媒で反応が進行する高反応性のため、世界的に注目されています。代表的な国際的化学雑誌Angew. Chem. Int. Ed.のVery Important Paper (VIP: トップ5%以内の評価)に選定され、研究内容が内表紙にハイライトされました。

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この触媒は、多様な置換様式をもつアリルアルコールの不斉異性化に適用できます[D1]。例えば、図4-2に示すように、入手容易なネロールから対応する置換アルデヒドを>99% eeで合成することができます。このアルデヒドは需要の極めて多い香料メントールの合成原料であり、化学系企業と協力して実用化検討を行っています。

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